各タイプ共通事項

各タイプ共通事項

(1)作動精度について

実際の地震時における感震ブレーカー等の作動は、必ずしも各地の計測震度分布と同等に作動するものではなく、それぞれの家屋の特性等に応じて、屋内において家具の転倒等が生じる程度の大きな揺れが発生した場合に、電熱器具等への通電が遮断されることを期待するものである点について、設置者における理解と周知を図る必要がある。

なお、設置にあたっては、十分な剛性を有しない壁への設置や生活振動による誤作動の発生等により、製品に対する信頼性を損ねることなどがないように留意する必要がある。

(2)停電時の照明の確保について

本来、大規模地震が発生した場合、感震ブレーカー等の設置の有無に関わらず、発電所や送配電設備の被災等により、被災地域において大規模な停電が発生する可能性がある。この他、地震災害以外の豪雨や降雪等によっても停電が発生する可能性があることも考慮し、一般的な防災対策として、停電時に作動する足元灯の設置や寝室に懐中電灯を常備しておく、最低限の照明を確保するため例えば携帯電話を枕元に置いておくなど、各家庭における防災上の備えを講じておくことが望ましい。

このような一般的な防災意識の維持に努めつつ、例えば簡易タイプの感震ブレーカー等については、大規模地震時に即時に一括して電気の供給が遮断され、夜間においては廊下・階段等を含めた照明が使用できず、加えて大きな揺れにより家具等が散乱していることも想定されることから、設置者においては上記のような備えのほか、屋内の暗所での移動時に散乱したガラス片等で怪我をすることのないようにスリッパ等を用意したり、高所に設置された分電盤の操作を容易とするための安定した台座の確保等についても配慮をしておくことが望ましい。

(3)復電時の安全確保について

大きな揺れに伴い感震ブレーカー等が作動し、揺れが収まった後に電気の使用を再開する際には、

  • ガス漏れ等が発生していないことを十分に確認すること。ガスの臭い等が感じられる場合には復電操作を行わず、仮に復電操作をした場合にあっても、電灯のスイッチの操作やコンセントの抜き差し等を行わず、メーターガス栓を閉め、速やかにガス会社に連絡をすること。
  • 建物内の電気製品の安全確認を行い、屋内外の配線の状況や家屋の傾斜の状況等についても可能な限り確認を行った上で復電作業を行うこと
  • 万一の出火に備えて消火器等を確保した上で、復電操作を行うことといった対応をとることが望ましい。仮に、復電後、焦げたような臭いを感じた場合には、直ちにブレーカーを遮断し、再度、安全確認を行い、原因が分からない場合には電気の使用を見合わせることが必要である。
  • また、分電盤が高所に設置されている場合には、余震による影響を考慮しつつ、安定した台座を用いて復電の作業を行うなど、転倒等による二次災害の防止に留意することが必要である。

    なお、例えば分電盤タイプの感震ブレーカーの中には、感震後の待機時間中であれば、居室内の手の届きやすい場所において、分電盤の通電遮断動作を中断することができるバリアフリー型の製品も市販されていることから、居住者の特性・ニーズに応じて、適切な製品を選択することが考えられる。

(4)感震ブレーカー等の信頼性の確保に向けた継続的な取組み

感震ブレーカー等は、機器の態様は異なっても、地震発生時に電気に起因する出火抑制を図るという共通の目的を有している。当該分野全体として、消費者の信頼性を高め、普及の促進を図る観点から、当該分野における各メーカー等にあっては、所期の性能が発揮されることはもとより、作動の安定性の確保に向けた性能試験、出荷試験等を通じた継続的な取組が望まれる。

一方で、感震ブレーカー等は、その作動機構、製品のもつ機能等に応じて、使用上の留意点等が多様である。各メーカー等にあっては、機器の使用者に誤解や混乱が生じたり、逆に過剰な安心感等を与えたりすることのないよう、各機器の特性、使用上の留意点、想定される出火予防の適用範囲、防災上取り得るその他の対策等についての説明の充実、注意喚起が図られることが必要である。その際、多様な方々に広く設置を促す観点から、平易でわかりやすい説明、表現に配慮することが望ましい。

さらに、それぞれの製品における作動機構や電子部品、設置方法や設置環境等に応じて、経年劣化等が生じるおそれがあることから、定期的な作動性能の確認、必要に応じて部品の交換等を行うことについても周知が継続されることが望まれる。

(5)出火抑制に向けた多重的な取組み

電気に起因する火災の発生抑制にあたっては、感震ブレーカー等の普及が大きな効果を有するものと考えられるが、これは、従来から取り組まれてきた、

  • 過電流や短絡、漏電の際に電気供給を遮断する漏電ブレーカー等の普及、取替えの促進
  • 転倒時自動電源遮断装置を備えた電気ストーブ等の普及・買替えの促進
  • 仮に出火に至った場合に対する消火器等の備付など初期消火体制の強化

等の取組みと相まって、電気火災の発生抑制効果をより高めることが期待されるものであり、大規模災害に対する多重防御の視点に立ち、これらの出火抑制対策についても引き続き推進することが必要である。